ポケットの中を弄るのが癖になった。
淵の大きく欠けた薄いボタンが一つ。
尖ったプラスチックの感触を水仕事で荒れた指先が撫でる。
此処にはあの男の血が染み込んでいると、サンジは頑なに信じている。




















血を啜る



















弁解しておきたい事なら多々。
あの夜の、自分の告白が実を結んだなどとは露ほども思っていない。
反射的に噛み付いた無骨な指の感触と鉄の味と弾け跳んだボタン。
ラウンジの端に転がったそれにこびり付いた紅い染み。
とうに消えてしまったけれど、サンジの目にはこれ以上ないくらい確かに存在している色。

あの男の血を舐めた。まだ足りないと渇いている。
次にヤツが大怪我をしたときには、きっと啜ってやろうと決意している。
瞬間叩き斬られるのを覚悟の上で。

散乱した食器にこびり付いた食い物の残骸と油染み。
それでも酒瓶だけは倒さない飲んだくれの根性が笑える。
見下ろした瞳が余りに無感情だったから
氷水にでも漬けてくれたほうがまだ温かいさ、等と思わず冷静になった自分が笑える。
そのくせこんなウスギタナイ野郎にでもきちんと反応している冷たい欲望が笑える。
お互い様だ。
全部、全部、どうしようもない。
馬鹿馬鹿しくて笑える。

腕を捻り上げられて、バックの状態から慣らしもせず突っ込んでおいて
声を出すな、振り返るなと、勝手な事ばかり言う口が当然触れてくる事なんかあるわけがない。
器官がまず違う。肉の質が違う。
女を抱いている気になど到底なるはずないのに。
それで泣きそうになる自分が一番滑稽だ。


あれを強姦と言うのか、実のところサンジにも分からないでいる。
どれだけ爛れていようが、欲望に塗れているだけだろうが、少しも嫌悪感が湧かない。
自分の側から仕向けたのだから当然かとも思う。
男同士だのなんだのを葛藤する時期はもうとうに過ぎ去っていたし。
挿れられた側だとか、そんな事も別段どうでもよかった。
案外、常識だのモラルだのが肝心な部分で欠落した自分というものを、サンジは正確に自覚していた。
外側を繕えればとりあえずはそれでいい。
行為を思い返して自慰もする。
自分の方が余程アレを汚しているという罪悪感からなのか。
それともいい加減自分の頭がおかしくなってしまっているだけなのか。
麻痺しているなとは思うけれど、何に傷ついているのか、何を喜んでいるのか分からないのだから仕方がない。
こういうことは結局、受け手の感覚次第なのかと妙なところで感心しそうになって
では受け手とはどちらなのかと自問すれば答えが出ない。

三連のピアスが不規則に、涼しげな音を鳴らしていた。
反比例する荒い息遣い。
その残響にぞくぞくする。
けれど距離が遠い。
背中がすうすうと肌寒い。
これでは汗もかけない。
もっと近づけと願った。
叶う筈ないと理解していた。


最初から一週間ほど経った、中途半端に膨れた月の夜だった。
特に晴れ渡るわけでもない、湿度の高い、煮え切らない風景の過ぎる甲板で当然のように押し倒された。
他のクルーが、いつ起きだして来るとも分からないのに。
尚更興奮を煽るだけのそんなシチュエーション。

なんとなくは予感がしていた。
……といえば、それは結果論でしかない。
単なる予感じみた期待だった。
『だったらもう今後は一切強姦にはならねえって事かな』と、見当違いのことを思った。
だからといって和姦というのとも違う気がする。
差し詰めダッチワイフか。
人形に意思はないから、強姦も和姦もあったものじゃない。
では自分は人形にならねばなるまい。
幸い自分の髪は成人間近の今でもノルディックを保っているし。
肌はノース特有に白くて、けれどシミもそばかすも出来ない性質だし。
瞳は元々シエラブルーだから、人形に見えないこともないかもしれない。
そんな事をつらつら考えた。

けれどそんなサンジの意に反して。
その日、ゾロは優しかった。

キスこそしないものの、前戯らしい前戯をして。
そこを解して、慣らして。
相変わらず後ろからの挿入だったけれど、前よりも体は密着していた。
微かにピアスの音。
この間のセックスには不思議なほど痛みも快感も何もなかったのに。
今度は何故だかどっちもあった。
動きに合わせてやたらと声をあげた。
抑えようという気も起きなかった。
そうしたらゾロの馬鹿に大きい掌が唇を覆った。
この間の噛み痕はもう消えただろうか。
くぐもった声が振動する。
また噛み付きたい衝動。
余計に興奮するばかりだ。

それからは一週間に二、三度は船のどこかでセックスをした。
何れも最初にしたときのような、暴力的なそれではない。
そんな事を繰り返していれば、なんとなく期待してしまっても、自分に罪はない気がする。
手の中にはいつもあのボタンがある。

例え、未だにキスをした事がなくても。
例え、未だに抱き合った事がなくても。
あの男の肌の感触や温度に、触れた事なんか微塵もなくても。


久々の上陸で、食料の心配を免れたサンジは、全く無警戒のままに視線を正面に戻した。
そこにある剣士の後姿を見て、しばし呆然とする。
もう遠くの方をゆったり歩いていくゾロに、少しだけ悪い予感がした。
島の中心の方でちかちかと派手なネオンが瞬いている。
性の臭いのぷんぷんする土地で。
思い至って吐き気がした。

多分ゾロは、今夜女を抱くだろうと容易に想像できた。

やはりというか、その日ゾロは船に戻らなかった。
あの男のおかしな性質のせいで、解散してから、ログが溜まる間近まで消息不明な事はよくあるけれど。
ただ迷子になっているだけならいいと思う。
あの場所までたどり着けなければいい。
自分の勘が、こんなときばかり頼りになることには目を瞑って。

結局他のクルーも誰一人船には戻らない。
とうに日付をまたいだ時間。
うとうとしかけても、完全には眠れそうに無い。
重たい目の下の鈍い痛みをゆるく擦る。
酒とタバコの臭いで淀んだ空気と頭痛と、握り締めたラムの空き瓶に舌打ちする。
軽く掃除をして、換気をして、少し無用心かと思いつつもそのままバスルームに向かった。
シャワーで汗でも流せば、この陰鬱な思考も少しはさっぱりするかと期待した。


「利用できるもん利用して何が悪い」

午前2時。
深夜のラウンジから消したはずの灯りが漏れていた。
一瞬どきりとしたが、敵だという気配でもない。
誰か帰ってきたのかとノブに手をかけたらそんな声がした。
瞬間的に体が動かなくなった。
首にタオルを巻きつけて、湯気を漂わせながら彫像のように固まっている。
何となく間の抜けた姿だなあとぼんやり思った。

「……残念ながらその言い分には賛成なんだけどね」

女性にしては幾分低めの声が渋々といった風に応えた。
『ナミさんも帰ってきたのかあ、こんな時間だけど何か軽く食えるもの作って差し上げようか……』
温かいスープでも飲めば眠れると思うから。

そのためにはこのドアを開けて入ってしまえばいいのに、どういうわけか未だに体が動かない。
この人はとても聡明で、瞳の光が強くて。
特に、最近の彼女の眼差しは、直視できないほどに鋭い。

『ナミさんに隠し事は出来ねえなあ』

常日頃から思っている。
ナミとサンジはよく目が合う。
前まではサンジの方が一方的だった。
今は避けていても何故か合う。
ナミはサンジを見ている。
観察している。
きっとこのままだと何れ心が折れる。
洗い浚いぶちまけた方が楽かと逃げる。
それは流石に無様だ。
だからなのか、サンジの足は縫い付けられたように動かない。

こんなときばかり頼りになる勘。

「関係性の問題よ。ゾロあんた、サンジ君との……アレは合意の上なの?」

「それこそ答える必要がねえ」

「馬鹿言わないで、コレは私たちクルー全員の問題でもあるのよ」

サンジはぼんやりと『ナミさんはやっぱり知ってたんだ』と思った。
けれどそれだけだった。
別に知られてもいいやとは思っていたし、正直その点はどうでもよかった。
けれど例えば自分が今ラウンジにいれば、大げさに慌てているのだろう事も想像がついた。
では今の状況ならば面倒がなくていいとさえ思う。
さながら二重人格者だ。
苦く笑った拍子に空気が振動した。
だからそれに自然と乗る形で届いた言葉に反応するのが一瞬遅れた。

「あんたは、仲間を利用するの?」

利用?

その意味に気付いた途端、首筋がぴりっとしびれた。
すっかり冷え切ってしまった髪の先から雫が落ちる。
『冷たいなあ』と表面では暢気に思いながら、サンジは内心激しく動揺した。

「てめえに言われたくねえ」

「私のソレとアンタのアレは別」

内容の重みと比例しない軽口の応酬を自らの内部に入れる事無く聞き流しながら
サンジは無意識に渇いた笑いを漏らした。
見開いた瞳が異様に乾く。

次にくるゾロの言葉が何故か恐ろしく思えたので、その前に自分が何か言ってしまおうと思って
その輪に存在していない己に気付いて尚焦った。
面倒だ、などと思ってしまった自分に罰でも当たったか。
そう考えて仕方なくサンジは、声には出さずにめまぐるしく脳みそを回転させてみる。
現実逃避でも、独り善がりでも、少しはダメージを減らせるかなあ、程度の認識だった。

ああナミさん、それはお互い様なんだ。
俺は俺であいつを利用しているだけなんだ。
あいつの何か一部だけでも欲しくて、だから体を繋げて
でも陸に上がれば他のレディのものなんだけど
だけどそれでも海の上にいるときだけでも俺のもんだって
そう、そう錯覚したくて、俺があいつを誘ったんだ。
錯覚するために、幻見るために、利用してるから利用されてもいいんだ
俺はだから、傷ついてなんか―――


「利用して、なんか悪ぃのか」


ああ、だから、俺は傷ついてなんかない。


「あいつが俺を『好きだ』と言った、もの欲しそうな目で俺を見ていやがるから、俺も溜まってたし、突っ込んでやっただけだ」

「アンタ……」

「それの何が悪ぃんだ、抵抗されなかったぜ
次に押し倒したときもなんのリアクションもおこさねえ、それは同意って事じゃねえのか。
最初にしたとき、あんまりきついんで俺もよくねえから色々弄ってやったら気持ちよさそうになきやがるし。
でかい声だったよなあ、てめえらにも聞こえてただろ、あの淫乱コックの善がり声……」

ばしっと高く重たい音がした。
多分『ナミさんがクソセクハラ剣士に平手を打った音』だろうと知れた。
指先をザラリと掠める硬質な感触。
あるはずだろうと思う。
何も感じない。
麻痺している。

空を見上げる。
ボロボロと、星屑が剥がれ落ちるようだ。
中途半端に濡れている髪からハラハラ水滴が垂れる。

「最っ低……!」

彼女はやっぱり優しい女性だから。
自分の代わりに泣いてくれようとする。
怒ってくれようとする。
嬉しいはずなのに、心の奥底で、理不尽な憤りをサンジは感じている。
醜くて、脆弱な感情をもてあましている。

急に目の前が白んだ。
脳みそがスパークしたのかと一瞬本気で信じかけた。
馴染んだ様子が今は白々しくさえ感じられる。
逆光にも負けない、貴女の鋭い眼光に俺は勝てない。

知りたくもない現実。
目をそむけていた現実。
陳腐な言葉と欲で、容易に傷つく自分。


「サ、ンジ君……」

扉の前にしっかり根を張ってしまった両足が。
ラウンジを出ようとしたナミと見事に鉢合わせてしまった。
途端彼女は、既に涙でぐしゃぐしゃの頬を引きつらせ、一つ大きく嗚咽を漏らすと
悔しそうに地団駄を踏みながら唇を噛んで俯いた。
そんなナミの肩越しにゾロが頬杖をついてこちらを見ているのが見える。
目元は、他人事のように涼しい。
目の前でオレンジの髪が一房落ちた。
小刻みに肩が震えている。
宥めようとして、彼女が何のために泣いているのか思い出して途方にくれた。
くっと短い息遣いを遠くで感じて、反射的に視線を戻すと
その先でゾロが不敵に笑っていた。
自分を嗤っていた。
背筋が凍った。
同時に疼いた。
今までに一度も見たことのないような、歪んだ笑みだった。
怒りは面白いほどに湧いてこない。

頬を一発叩いたくらいで。

サンジは、何時の間にか握り締めていたボタンを掌に食い込ませながらギリギリと歯を食いしばった。
もしかして、途中で遮られて叩いてすらいないかもしれない、他人の鉄拳程度で。
自分の昂ぶった激情は収まろうはずないことは百も承知だ。
例え他の誰かがあの男を殺したところで。
渇く。

ぷつりと音がした。
掌にプラスチックの欠片がめり込んでいく。
おかしい。
顔はしっかり拭いたはずなのに、風が吹くたびスースーする。
ふっと目線を上げたナミの目が、サンジを捉えた途端瞬く間に涙を増やすものだから。
サンジはただ困ったように笑う他無かった。


渋るナミを無理やり説得した。
『自分の借金にしてくれて構わないから、今日は外の宿に泊まってくれないかな』
そう言ったらナミは『馬鹿ね、あの最低野郎のツケにするに決まってるじゃない』と唇を尖らせた。

「船の見張りもしっかりお願い」

いつもの口調で軽く忠告すると凛と背筋を伸ばしたナミは街へと向かって歩いていく。
大丈夫かと、問わない彼女の優しさが少しだけ救いだった。
その後姿を見送って直ぐ、サンジは迷う事無くラウンジに戻る。
一歩足を踏み入れると途端に引き倒された。
気配は感じていた。あえて無視した。
何をそれ程殺気立っているのか、凶暴な気迫が心地良い。
拍子にポケットから引きずり出された掌からこつんと音を立てて欠片が落ちた。
光の加減か、見下ろす瞳はあの日の血を固めたような緋色に瞬いている。

否応無く自覚する渇きだ。
その目に、唇に、噛み付きたい。
ふいに情の薄そうなその唇から、犬歯を覗かせて
ゾロは心底愉快そうに笑んだ。

「傷ついたか」

指先が触れるか触れないかの場所に転がっている歪な円が光ったような気がした。
きっとあのボタンは、この男の血を吸ってしまった事で
呪いの道具に成り果ててしまったに違いないと思う。
あの夜から何もかもが狂気染みた茶番にしか見えない。
その血を直接舐めた。
だからきっと、自分はもう逃れられない所まで来ている。

掌にべったりとへばりついた赤が茶色に変わって
ジクジクと音を立てて軋んでいる。
食われそうなほど凶悪な気だ。
そんなものに興奮する自分はまんまと毒牙に掛かってしまっている。

そう言えばアレは、何時何処で欠けてしまったのだったか。

「俺の言葉で、傷ついたか」

皮膚の分厚い剣士の指が、胸の中心を突いた。
そのまま容赦の無い力を込めるものだから、一瞬息が止まる。
そうしている間にゾロの顔が首筋に埋まった。
何をするのかと思えば、肉食獣よろしく噛み付かれる。
ただ大きく痕をつける事を目的としたものではなかった。
極小さい範囲を噛み切られて、その鋭い痛みに小さくうめく。
べろりと生暖かく湿った物体に撫でられ
そこから湧き上がるしびれるような痛みが全身に広がる。

いつも涼しげだったピアスの音が今は酷く五月蝿い。
距離が近い。
荒い息遣いが傷口に触れる。
甘ったるい香水の匂いがした。
胸がズキズキ痛む。
思わず息を呑んで眉根を寄せる。
同じタイミングで耳元に嗤う吐息がかすめた。

「てめえを傷つける事が出来んのは俺だけだ」

うわごとのように囁かれて
はだけられたシャツの隙間から、胸の突起をきつくつねられた。
全身を巡るように快感が突き抜ける。
耳がおかしくなって、自分のみっともない呼吸音が大音量で響いている。
ゾロが何か呟いている。珍しい事だ。
刻み付けたいのに、その意味を正確に掴めない自分に苛立つ。
心底、はまり込んでしまった自分が、情けないようで、愚かなようで、可笑しくもある。
サンジが笑おうとして息を詰めたタイミングで、ゾロの指がイイ所を弾いた。
仰け反ったせいなのか、乱れた呼吸のおかげなのか、水中で感じるような音の不明瞭さが幾分和らぐ。
ゾロの、熱に浮かされた如き呟きが急に色を帯びて感じられた。

「傷つけ、俺で」

存外、奇妙に切迫したような声だ。
わけが分からなくて、ぼうっと煤けた天井を見上げる。
もう一度『傷つけ』と男が言った。
何度でも繰り返す。
言葉と一緒に何かしらの刺激が与えられる。
それは単なる痛みである。
時に微弱な快感である。
もどかしい動きだ。
短く切りそろえられた爪が、それでも意図を持って鎖骨の上の皮を割く。
それほど痛みは無かったけれど、血は滲んだのかもしれない。
指がそれをグリグリ塗りこめるような動きをする。
ぎこちない動きのまま腕が上がって、薄く赤に染まった爪が、サンジの頬を撫でた。
促されるままに初めて視線が絡む。
相変わらずの無表情ながら、瞳だけは複雑な光を浮かべていると思った。
出会ってからこれまでに一度も覗かせた事の無い眼差しだ。
真っ先に、憎まれていると感じた。
けれど、それだけじゃないな、とも。
次には今に泣き出すんじゃないかと焦った。
前しか見ないと思っていた男が、初めて自分を振り返ったのではないかと。
何故か、そんな気がした。
はっとして、どうにも今すぐに手を伸ばさねばなるまいと思って身じろぐと
反射的なのか、強烈な力で押さえ込まれた。

「俺だけだろう」

吐き捨てるかのような言い方に、余裕など微塵も感じられない。
胸元に頭を擦り付けられる。
短い髪の先が、先刻の傷に突き刺さる。
嘲笑と、快感と、焦燥と、慟哭と。
声に滲む色が傷口に擦れて絶望的な感傷を追い上げる刹那。

この男は―――。

サンジは、唐突に気が付いてしまった。
自然、頬の筋肉が引きあがる。
喉の奥が鳴る。
間違いない、掴んだ、と確信した。

そうだ、この男も餓えている。
元より、平穏な幸せを紡げるはずの無い、欠落した者同士の。


「俺だけだと言え……!!」


ボタンが光る。
内包した血痕が蠢いている錯覚。
狂わされている。

現実は思っていたよりも壮絶に愉快だ。


「血」

あの味は全く甘美だった。
何時死ぬとも知れない海賊稼業。
特にこの男は一番死に近い。
だけど自分はこの男が
他の輩に殺されるだなんて許せない。

血まみれの姿で。
何れ腐るだけの肉片、血潮。
もう自分の飯を食って、体を力を血を作らない。

そんなの絶対に許さない。
サンジの蒼い眼が深みを増して群青に揺らめく。

「血が吸いてえ」

興奮と歓喜に掠れた声が、欲を吐き出す。
あの液体は熱かった。
自分だけが知っている味だ。
コレだけは、誰にも味わわせてやるもんか。

「てめえの、血」

俺だけのものだ。
だからお前も
この内面を抉る事で湧き出す血は全部
浴びるように啜ればいい。

「ゾロ」

呼ぶ声に導かれるように、顔を近づけてくる。
サンジは太い首に腕を巻きつけてから
間近な下唇を舌先で消毒するように突付くと
躊躇う事無くそれに喰らいついた。
途端にゾロの舌先が
そのまま情事のような激しさでサンジの口内に進入する。

呆気ないほどサラサラとしたまま広がっていく味と匂いを
一つも逃さないよう絡め合う。











END

































ただただ、「悪ゾロ祭り」やってよかったなって、自分を褒めたい。
ありがとうございましたm(_ _)m