
逃げを打つ背中は妙に華奢に見えた。
だが、憐れみなぞは微塵も感じない。
在るのは、美味なる獲物を前にし昴ぶる獣の欲望だけだ。
むんずと捕まえて、己を突き立てる。
「ぐ、ぁッ」
ナカを強引に暴かれて、白い体が仰け反った。
痛みをやり過ごそうとしているのだろう。床に立てた爪が滑り、かりかりと哀れな音を立てる。
「きつい。緩めろ」
これではこの体を堪能することが出来ない。
ぺちぺちと尻を叩いてみても、それは息を整えることすら出来ないらしい。
剥き出しにした太腿をぶるぶると惨めに震わせている。
ゾロは、ちっ、と一つ舌打ちをした。
いい加減馴れればいいものを。
これを気に入ってはいるが、こういうところが厄介だ。
女なら勝手に濡れる。
ずぶずぶと沈み込むように、何処までも男を受け入れる。
容易く受け入れないからこその面白味もあるが、面倒なことは面倒だ。
繋がった箇所に油をたっぷりと垂らし、その滑りを借りて、強引に腰を進める。
ずぢゅ、と濡れた音がし、組み敷いた体がまた仰け反った。
半ばしか挿入されていなかった自身が窄まりの中にぬっぽりと納まる。
まだきついが、絡みついてくるソコは確かな快楽を与えてくる。
「ぁっ……ふ」
腰を抱えて軽く揺さぶってやると、鼻にかかった甘えたような声が漏れた。
「へェ、もうイイのか」
びくりと体を震わせたが、何も言わない。
ゾロはふん、と鼻を鳴らして、また腰を揺さぶった。
今度は、ひゅっと息を呑む音がしただけだった。
きっと声が漏れぬよう、唇を噛み締めてでもいるのだろう。
無駄なことを、とこれからこれが至るだろう姿を思い浮かべ、ゾロはうっそりと嗤った。
奥まで犯したかと思えば、じりじりと引き抜き、また一気に穿つ。
何処を突けば善がるのかも、もうすっかり覚えた。
ぱんぱんと肉がぶつかる音がキッチンに響き、悲鳴とも嬌声ともつかぬ声が上がる。
ここまでくれば流石に声を押し殺すことは出来ないらしい。
寧ろ、もっと犯してくれと言わんばかりにゾロの動きに合わせて腰を振っている。
娼婦のように淫らな様。
先程、思い浮かべたとおりの姿だ。
くく、と喉の奥で嗤い、汗に濡れた背を撫ぜる。
華奢とは言い難い、綺麗に筋肉のついた背中だった。
その視線に気づいたのは、この男が羊船に乗り込んできてから割とすぐのことだ。
確かグランドラインに入る前だった、と思う。
何処か粘着で意味ありげな、例えるなら花街の女のような視線。
その当時、クルーの中で唯一の女性であった航海士はそういう類の目でゾロを見るとは到底思えなかったから、
一体何処のどいつが、と思った。
他人の気配には相当に敏いゾロのこと、視線の主はすぐわかった。
何かといえばすぐに絡んでくる、クソ生意気なアホコック。
寄りにも寄って、だ。
まさかとも思ったが、ふと眼を遣ってみれば、あからさまにふいと逸らされる視線に、ああ間違いじゃねェな、と気づいた。
眼を遣るとき、一瞬だけ出会う瞳は海のように碧く、子供の頃に宝物にしたビー玉に何処か似ていた。
嫌悪感なんてものは感じなかった。
寧ろ、悪くねェ、と思った。
そして、面白いとも。
その理由をごちゃごちゃと考えるのをゾロは好まない。
だから至って単純に、本能のままに、それに手を伸ばしてみることにした。
深夜のキッチンで唐突に押し倒されて、当然ながらコックは大いに抵抗した。
「何トチ狂いやがってる、アホマリモッ!」
口汚く罵ってくるコックの喉元を締め上げ
「あ、てめェが女みてェな眼で誘ってくっからだろ」
不遜に言い放つ。
「はっ?ワケ、わかんねェよ、この…クソ、魔獣……人間、様の言葉……話し、やがれっ」
苦しいのだろう、罵る言葉も途切れ途切れだ。
だが、抵抗は止むことなく、組み敷かれたままガシガシとゾロに蹴りを入れている。
ゾロはちっと大仰に舌打ちすると、喉元を押さえつけていた手を離し、代わりに右手を捻り上げた。
「痛ッ!」
「まずは右手からだ」
骨が軋み、みしっと嫌な音を立てた。
この男が己の手を如何に大切にしているかは、他のクルーから伝え聞いている。
「次は左手だな。それから脚だ」
淡々と言いながら、徐々に力を込めてゆけば、みるみるうちにその顔が蒼褪めた。
面白いほどに抵抗が止み、遂には床の上にその身を投げ出した。
瞳にだけは抗いの色を滲ませていたが、そんなものゾロは物ともしない。
寧ろ、それを犯している間も、その瞳だけがこの男らしさを残しているようで、酷くそそられた。
結論から言えば、それは大してイイ体でもなかった。
ごつごつと硬いし、穴は狭く、締め付けが過ぎた。
だが、行為自体に感じる愉悦は今までのそれに勝るものはなかった。
やたらとプライドの高い男を組み敷き、啼かせているのだという優越感。
しかも、これはこの船の中で一番侭ならないと思っている男だ。
それが己を咥え込み、終いには目前で絶頂を迎えて見せすらしたのだ。
酷く面白く、愉快だった。
もっと玩んでやりたいと思った。
この男の、啼く様がもっと見たい。
抗いながらも、快楽に堕ちてゆく様がもっと見たい。
これはオレの玩具だ。
オレだけのもんだ。
勝手に決めた。
そうして、それからも何度もその痩身に手を伸ばした。
その男が世界最強の男と対峙する様を目の当たりにしたとき、サンジの中から湧き出たのは、凄まじいほどの羨望と、
欲求だった。
惚れただとか、恋だとか、愛だとか、そんなシロモノじゃない。
まさしく求道者と呼ぶに相応しく、ただひたすらに抱いた野望のままに最強への道を突っ走るのが許せなかっただけだ。
その当時の、海上レストランに自ずから縛りつけられたままの己とはあまりにも対照的な姿を、羨み、妬み、だからこそ
手中に納めたいと思っただけの話。
高みへと昇ろうとするその存在を、雑多な想いを抱えている己と同じところまで引き摺り下ろしたいと思った。
そして、サンジ自身がバラティエから旅立ってからも、一度芽生えた欲求は消えることはなかった。
それを手に入れる具体的な手段なぞ、全く思い浮かばなかったけれど。
抱かれたい、なぞとは欠片も思っていなかった。
そんな嗜好なぞ全く持ち合わせていない。
おぞましいとすら思う。
だけれど、いきなり深夜のキッチンで組み敷かれ、己が身が性的な対象と成り得るのだとこの男自身の手によって
自覚させられたとき、これを所有するには、セックスという形が恐らく一番容易い手段だろうと気づいた。
もしかしたら、以前から本能的には気づいていたのかもしれない。
誘っている、というあの男の指摘には思い当たる節があった。
確かに、追っていた。
遥か高みを見つめる横顔を。
鍛練の際、美しく律動する背筋を。
自分が作った料理を咀嚼する口許を。
無意識に追い、求めていた。
そうして、それらはその夜、サンジの手の内へと落ちてきた。
高みを見つめていた眼に捉えられ、硬い筋肉のついた背に爪を立て、料理の代わりに喰い散らかされる。
意にそぐわぬその行為の果てに存在したのは、痛みと強烈なる不快感と屈辱と、そして大いなる愉悦。
だから、犯されたことを全く責めもせず、爾来サンジは求められたら脚を開いてやることにした。
後ろから一気に貫かれ、揺さぶられ、悲鳴にも似た甲高い声を上げる。
こうやって、犯されるのが一番好きだ。
二人揃って獣に成り下がったような気分にすらなる。
本能を剥き出して、欲望のままに吼える獣に。
男に脚を開くことに全く抵抗がないわけじゃない。
寧ろ、未だ大いにあると言っていい。
だから、この男に強引に暴かれて、獣に引き摺り下ろされるくらいが丁度いい。
「あ、あ、あ」
男に掘られて喘ぐ己を、この男は滑稽だとでも思っているのだろうか。
だが、こちらから言わせて貰えば、朝昼晩問わず平たい男の体に盛って来るこれだって相当に滑稽だ。
そうだ、もっと互いに滑稽な姿を晒せばいい。
ナカをぐっと擦り上げられて、触られてもいないペニスからぽたぽたと先走りが零れ落ちる。
互いが互いの体に、随分と馴染んだ。
手酷く扱われることすら、最早サンジには快楽だ。
多分、もう女の子とのセックスじゃ満足出来ねェんだろうな、と思う。
少しだけ、残念だ。
ふと、己の中に収まっている馬鹿デカいイチモツが忌々しくなってぐっと締め付けてやった。
「っ」
息を呑む音がし、腰を掴む手に力が入る。
このままイけば面白かったのに、と思った。
「イイのか、淫乱」
低く掠れた声に、サンジはうっとりと笑みを浮かべる。
この瞬間が、堪らなくいい。
この男がこうやって蔑むのは己だけだ。
薄汚い欲望をぶつけてくるのも、己だけ。
言葉で答える代わりに腰を振る。
もっとこの男の欲望を育てたい。
内なる獣を育てたい。
決して他の誰の眼にも触れられることのない欲望を、獣を。
育てて、全てこの身にぶちまけさせたい。
何度も、何度でも。
それは、オレだけのモノだ。
所詮、剣士とコック。
あっちは最強を、こっちは奇跡の海を目指す。
どうせ交わらない道なのだから、こんな風に交錯するのも悪くない。
END
悪ゾロ様と確信犯サンジ〜〜〜〜〜っ!!!
結局お互いがお互いに嵌っているのです。
きっと、それぞれが相手を弄んでる気分なんだろうな。
それでいて手放せない自覚がある。くううっ
それにしても、サンジを脅す悪ゾロに萌えるっ
酷い〜エロい〜vv(大喜び)
サンジを支配する快感と、ゾロを煽らせる悦楽に浸る二人がたまりません!
萌える悪ゾロ様!ありがとうございますvv