Sleeping beauty
【夏様】



「睡眠時間なんてコントロールできんだよ。無駄にダラダラ寝ているヤツの気がしれねェ」
 アホコックの発言が聞こえた。いつもの皮肉か。まさにダラダラ寝ている俺は、面倒なのでそのまま狸寝入りで
転がっていたのだが、コックに答えるウソップの声が聞こえ、片目だけ薄く開けた。
 海面に向けて釣り具を垂れているウソップと釣果を待っているコックが雑談をしている。俺に対する嫌味ではなく、
単なる会話の一部だったらしい。
「俺は一日七時間睡眠がベストだな。それ以下でも以上でも、寝起きが悪くなっちまう」
 ウソップが言うと、
「七時間も寝たらもったいねェ。一日は二十四時間しかねェんだぞ。俺ァ、三時間もありゃ十分だ。バラティエの
 コックは全員そんな感じだったぞ」
 偉そうにコックが言う。
「へえ。コックってのも大変だな」
「そりゃそうだ。仕入れだろ、仕込みだろ、店の掃除にクロスの洗濯だろ、やることはいっぱいあるんだ。寝ている暇もねェ」
「でもたった三時間しか眠らねェなんて、睡眠不足で、逆に効率悪くなるんじゃねェか?」
「だーかーらー、ふかああああく眠るんだよ。三時間で七時間分眠る技を身につけてるんだよ、俺は」
「……なるほど」
 ふたりの会話を聞いて、俺は脳裏に閃くものを感じ、こっそりと頷いた。
 じゃあてめェは、ちょっとやそっとじゃ起きねェくらい、深く眠ってやがるんだな。
 いいことを聞いた。



 深夜というべきなのか早朝というべきなのか、午前四時に目を覚ました俺は目的の人物が眠るハンモックに気配を
殺して近寄った。
 上から覗きこむと、アホコックが熟睡中だ。
 起こさないよう慎重に心がけ、コックをハンモックから抱き下ろし、男部屋から格納庫へと移動した。
 意識のない肉体は重くなるが、俺にとっちゃたいした重さじゃねェ。
 ハンモックより少ない揺れで、コックを格納庫に敷いた毛布のうえに横たえるなんて朝飯前だ。
 コックが昼間の発言通り、深い眠りに落ちているのを確認すると、念のため、万歳の状態で両手を手拭いで縛る。
 さらに念のため、予備の手拭いで、目隠しと猿轡をした。
 戦闘能力はそこそこにあるコックだが、敵意や悪意に鈍いところがあるので、思ったより簡単に拘束できで拍子抜けする。
 もしかすると、このあたりで目を醒ますんじゃねェか、と心配していたのは杞憂だった。
 よし。
 準備は万端整った。
 俺はまず、仰向けになっているコックのブルーのパジャマの前を肌蹴させた。現れた白い肌に、そっと手を置いてみる。
 鳩尾の部分はしっとりと滑らかで、規則正しく脈打つ鼓動が伝わってくる。
 以前から食ってみたいと狙っていた肌だ。
 据え膳を前にして、俺は荒くなる鼻息を必死に堪える。
 落ち着け。気がつかれねェように、触らねば。
 手の平全体で胸から腹部にかけて撫で回していると、突起物が引っかかった。
 柔らかいその感覚を手の平で転がしていると、ぷつん、と起ち上がってきて、興奮した俺はそれを弄くり倒した。
 膨らんだ突起を抓んでいると、
「…ん…」
「!」
 猿轡の間から、コックの吐息が漏れ、驚きのあまり息が止まった。ついでに、手の動きも止めた。
 起きやがったか…?
 緊張しながら、コックの様子を窺うと、しばらくして「すー、すー」と穏やかな寝息が聞こえて、ほっとする。
 やべェ、やべェ。驚かせんじゃねェよ。こんなところでやめてたまるか。
 敏感そうな乳首は避けて、下肢へと興味を移すことにし、パジャマのズボンを膝まで下ろす。
 ぶかぶかのトランクスではなく、ぴったりとした下着をつけていたので、ちょうどいい。
 下着の上から悪戯をすることにした。
 ふっくらと盛り上がっている陰嚢のあたりを下から上に撫で上げる。
「―――ふ、あ…」
 コックの声が聞こえたが、今度は驚かなかった。コックが起きたわけではなく、眠ったまま、身体への刺激で単純に
声を漏らしているだけだとわかっていたからだ。
 下着の上から触っているだけでも、コックの性器が反応し始め、砂で作った山が水をかけると固まるように、徐々に
硬くなり、形が顕著になってくる。
 撫でるだけでなくて、揉み込んでやると、コックの腹部がぺこぺことへこみ、
「ふ……」
 色づいた吐息を漏らす。
 おお…!
 俺が目を瞠ったのは、無意識なのだろう、コックがもっと触ってくれと言わんばかりに腰を突き上げたからだ。
 両脚を開き気味にして、誘っている。
 水色の下着はじっとりと湿り、色が濃くなっていたので、太腿の方からすこしだけ下着をずらすと、出してくれるのを
待っていたかのように、コックの性器がはみ出した。
 理性が吹っ飛びそうになるのを歯軋りをして食い止めながら、脚を閉じられないように、固定することを思いついた。
 剣士の生命である剣を腰から抜き、刀は床に刺し、膝裏に宛がった鞘に開いた状態の脚を括りつけてやった。
 コックはなんとも淫らな格好に仕上げられたことに気がつかず、眠っている。
 ここまで来たら、もう最後までいくしかねェ。
 膝が括りつけられている鞘の端の部分ではなく、真ん中を握った俺はそのまま鞘を持ち上げる。すると、コックの腰が
持ち上がり、尻が見える。
 下着の上から、尻の狭間の部位を人差し指で押す。そのまま、ぐりぐりと指を押し付けるが、下着の弾力ではない
抵抗に遭遇し、侵入が阻まれた。
 性急に押し拡げるために、下着を太腿までずらすと、興奮しているコックの兆しが直立したので、それに指を絡め、
同時に尻の谷間も刺激する。
 前と後ろの性感帯を弄られ、コックの呼吸が荒くなり、乳白色の肌が薄っすらと紅く染まった。
 指先で後孔の一番敏感な部位を探し当てたので、そこばかりいやらしく責めると、握りこんだ性器がダラダラと濡れはじめる。
「…ハァッ、ハァッ、ハァッ…」
 興奮のあまり、発情期の犬のような息を吐いているのは、俺なのか、コックなのか。どちらのものかわからない息遣いに
誘発され、さらに興奮が昂ぶっていく。
 硬く閉じていた襞が、俺の指の出入りに合わせて、ひくひく、と開閉する様が丸見えだ。
 指から伝わってくる感触も最初のキツイ感じから、柔らかい感じへ変化している。
 コックの鼻息が「ふー、ふー」うるさくなり、顔だけでなく全身の皮膚が真っ赤に染まった。
 もう、いいだろう…!
 俺は鞘を肩で担ぐようにし、浮いたコックの脚の間に腰を突き入れた。
 恐らくはじめての経験なのだろう、指で解したくらいでは、そこは俺の侵入を許しそうにない狭さと硬さだったが、強引に
突き進む。
「…ッ! …ッッ!」
 痛いのだろう、あまりに必死にコックが顔を振るので、髪の音がバッサ、バッサと鳴った。
 上に這い上がって逃げようとするコックを捕まえ、力いっぱい引き寄せる。
「ッ!!!」
 先端の膨らんだ部分が通り抜けると、そのまま根元まで思い切り突っ込んだ。
「…ッ、……ッ!」
 痛いほどの窮屈さが気持ちいい。俺は溺れるような気持ちで、頭が真っ白になり、その狭い孔を貪り食った。



 しまった。犯りすぎた。
 二度射精し終わって、ようやく正気に戻った俺は、目隠しをしていた手拭いでは吸いきれなかったのだろう、涙の跡が
幾筋も頬に残して、ぐったりとしているコックを途方に暮れた思いで見下ろした。
 恐る恐るコックの脚の戒めを解いたが、それはキックをかましてくることなく、くたりと床に落ちる。両手も解放して
やったが、同じように力なく投げ出されたままだ。猿轡を外すと、唾液がじんわりと染みこんでいるが、罵詈雑言を
並べ立てる悪魔の舌は大人しく沈黙している。
 ……?
 訝しく思いながら、最後に目隠しを取り去ると、驚いたことに、コックの瞼は閉じられていた。
 まさかこの状況で眠ってやがるのか…?
 いや、これは気を失っていると取るべきだろう。
 俺は激怒されないうちに、コックの汚れた性器をきれいに拭い、衣類を整えて、再びハンモックへと戻した。
 時計をみると、一時間半が経過している。
 さて。
 目覚めたコックに、半殺しにされる覚悟をしておこう。
 
 

 溜まっていた欲望を吐き出した俺はどうやらそのまま眠ってしまったらしい。
「起きろ、ミドリハゲ」
 翌朝、悪態と容赦のない蹴りでハンモックから落とされた俺は、咥え煙草でガラ悪くガニ股で立っているコックを見上げた。
「……ああ?」
「朝飯だ。はやく食え。片付かねェだろうが」
 肩を怒らせて文句を言うコックはどこからどう見ても、いつものコックじゃねェか。どうなってやがる。
「……てめェ、昨日のこと覚えてねェのか」
「はあ? 昨日?」
 コックは不機嫌そのものに顔を歪め、「なんのことだよ。わけのわからねェこと言ってねェで、はやく飯を食え」と、
俺を置いてさっさとキッチンへ行ってしまった。
 覚えてねェ? ってことは、寝ていたのか、あいつ。ケツを掘られた状態で?
「そういうことかよ」
 自分でも悪い顔で笑っていると自覚しつつ、俺は笑みを浮かべた。



 味をしめた俺は毎晩、ハンモックからコックを拉致し、格納庫に連れ込んでは、犯しまくった。
 目を閉じているコックは昼間の手に負えないじゃじゃ馬ぶりが発揮されないので、扱いやすい。
 好きな体位を取らせて、好きな角度で、好きなやり方で味わうことができる。
 だが、それが一週間も続くと、さすがに昼間のコックに影響が出はじめた。
 目の下に隈を作り、蒼白い顔色でふらふらしている。
「寝不足なんじゃねェのか」
 俺がわざとそう言うと、
「馬鹿言うな。俺は毎晩ぐっすり眠ってるぜ」
 コックが言い返してきた。

 
 
 毎日酷使されている、コックの秘孔は俺の欲望の形を覚えたらしく、挿入すると、嬉しそうに締め付けてくるようになった。
「…ッ、…ッ」
 ガツ、ガツ、と腰を動かしているうちに、コックの性器も勃ってくる。
 上方あたりを突き上げるのがコックの好きな場所だ。そこばかり執拗に突いていると、
「…ッ、…ッあ…!」
 猿轡では殺しきれない喘ぎが溢れる。
 俺は毎晩、コックの両手両脚、目と口をきちんと縛っていた。いつ何時、目を醒まされて、行為を中断させられるか
わかったもんじゃないからだ。
 だが、さすがに気が緩んだのだろう。
 今夜は、これ以上ないほど深い最奥を抉ったと同時に、目隠しがはらりと床に落ちた。
「……ぁ……?」
 コックも衣類が一枚剥ぎ取られたような感触に、軽い戸惑いの声をあげ、不安そうに首を揺らす。
 俺は自由になった視界を遮るように瞼を手の平で押さえ、
「―――まだ、目を醒ますな」
「ふァ…ッ!」
 深く繋がっている奥の部分を拡げるように肉茎の先端で掻き回す。
「そのまま寝ていろ」
「…ひ…ッ、…ッ…!」
 繋がったまま、コックの身体を反転させる。締め付けられている陰茎に強い刺激が加わり、俺は「う…」と思わず
呻いたが、コックのほうはそれ以上だったのか、「ひう…ッ」と鳴いているような悲鳴をあげた。
 コックを背後から貫き、
「…もし、てめェが起きていたら、俺にこんなことをさせるわけねェよな…?」
 耳元に息を吹きかけながら、囁いてやった。
「…ッ、…ッ!」
 あまりに荒っぽい動きのせいか、コックの太腿が痙攣し、繋がっている部位から先に放出していた俺の精液が
泡立って溢れた。
 じゅぶ、ぐぷ、ぐぷん。
 ありとあらゆるいやらしい音が奏でられ、俺は最高の享楽を味わう。
「起きねェんなら、ずっと犯ってやる。起きたら―――、終わりだ」
 てめェは覚悟を決めなきゃいけねェ。
 俺を拒否するか、受け入れるのか。
 起きている人間と眠っている人間では、呼吸も鼓動も体温もすべて違う。剣士の俺がそれに気づかないはずがない。
 最初の日、途中からコックは起きていた。まあ無理矢理突っ込まれりゃ起きて当然だ。次の日からはずっと、
最初から最後まで起きていた。
 それでも寝たふりを続けているのは――――。
「俺に犯されてェんだろ、てめェは」
「…ッ…」
 ぎゅうう、と秘部の締め付けがきつくなり、コックは何も喋らなくても、それはまるで肯定しているかのようだった。



 結局、コックは目を開けなかった。
 いつものように後始末をしたコックをハンモックに戻した俺は苦笑するしかない。
 このまま意識のないてめェを犯し続けるのも。
 勇気を出したコックが目を開け、新たな一歩を踏み出すのでも。
 どっちでもよかった。どっちでも、俺としては結果は同じだ。
「俺ァ、犯りたかったんだよ。てめェを。ずっと前から」
 眠り続けている男の瞼にそっと唇を落とす。唇の下で、コックの睫毛がゆらゆらと揺れたが、それはもう少し眠らせて
くれと言っているようでも、目覚めようかどうしようか逡巡しているようでもあった。

 
 



 END




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