Feel Me
【きんぎょ様】





バイトでDJをしていた奴に誘われて来たのが最初。店に来るそいつの友達や
いろんな客やスタッフになぜか気に入られて、タダ酒を飲ませて貰うことが多
かった。そいつはもう辞めたけど、居心地がよくて気まぐれに来る。

 元DJに紹介された一人、エースってのがここで一番良く会うやつだ。。

 ナンパするのに頭数合わせで合流させられたり、野郎ばかりで飲んだり。
ほとんど俺はみんなの聞き役だが、それはそれでなかなか楽しいもんだ。

 今日は誰も見かけてない。こんな日もあって、それも良し。
カウンター席に座ると「おごりだ、飲みな」とバーテンがバーボンを置いた。
「ありがてぇ。いただくぜ」グラスを目の高さにあげ、礼を言う。

 フロアに目をやり、見るともなく客を見る。大音響の中で踊るやつら。
熱気でふらふらの魚みたいだ。

 カウンターに向き直ろうとしたとき、一つの視線がからんできた。

 金髪の男。サンジ。

 何度か見かけたことはあるが、話したことはない。女の子と見ればでれでれ
しているのに、ナンパする時の頭数合わせになったこともない。なんでもエー
スがこのサンジのことを大好きらしくて、そういうところに呼びたくないんだ
そうだ。それにサンジがいるときのエースはナンパもしない。誰も近寄らせず
サンジを口説くのに必死なのだ。

 ほんとに好きなんだな、と遠くから見て思った。


 カウンターの中にいるバーテンへの視線だと思った。
でも後ろに誰もいない。俺の周りにもそれらしきのはいない。

 なんだ?こいつ。

 視線をそらさず、泳ぐようにひらひらとフロアを横切り、歩いてくる。




 「踊らねぇの?」


 上目遣いで俺を見ながら声をかけてきた。

 「あぁ。飲んでるほうがいい」
 こいつが俺のこと、何を知ってるのかわからない。どうしようか。まずは
好青年っぽく微笑んでやる。

 「ふーん…」
 サンジはバーテンに声をかけて、なにやらカクテルを頼んでいた。

 「エースなら、見かけてねぇよ」
 「エースを探してるわけじゃない。...俺はサンジだ。あんたは?」
 いきなり名前を聞いてくるか。お前の名前ならエースにさんざん聞かされて
知ってるよ。
 「ゾロ」
 ぶっきらぼうに返事してやる。

 「ゾロ。いい名前だ」
 もらったカクテルを一気に飲んで、サンジは立ち上がった。何を頼んだか
知らねぇが、一気飲みなんて大丈夫かよ。じっと横顔を見てると、俺の手を
つかんで、踊ろ、と歩き出した。

 暗いフロアでもわかる金髪。きれいな目。俺はそっちの趣味はないが、サン
ジには興味がわいた。ナンパ好きのエースが惚れてる男。どれだけ口説いても
なびかない男。

 サンジはずっと手をつかんで放さない。時折誘うように俺の目を見て、フロ
アをゆっくりと横切る。サンジの足が向かう方に黒服が立っていた。何か合図
でもしたのか、そいつはすっと横に動いた。踊るつもりは毛頭ないらしい。

 …こいつ、誘う気か。

 黒服の立っていた後ろに、長い通路がある。その先には"個室"があるのだ。
密室ではない。エースがナンパした時に数人で入ったことがある。フロアの音
は聞こえるのに邪魔されるほどではない。どうもその雰囲気に慣れなくて、み
んなが酔ったのをいいことに先にそこから抜け出したことがある。あの後乱交
パーティみたいになったのだ、とエースが言っていた。残らなくてよかった。
そういうのはどうも苦手だ。

 さて、どうすっかな…。


 少しだけ、俺の心が黒くなる。

 誘われてやろうじゃねぇか。




 6人も入ればいっぱいになりそうな部屋。座り心地良い深紅のソファの前で
サンジはやっと振り向いた。
 あまり背は違わない。サンジは何も言わず微かに笑うと、そっと手をのばし
て唇に触れてきた。少しだけその指を吸ってやる。するとサンジが顔を近づけ
触れるだけのキスをしてきた。俺はただ突っ立ったまま、そのキスを受ける。
ついばむようなキスをしながら、一歩ずつ前に寄る。くすっと笑いながら俺を
惑わせようとするかのように、ちろりと舌を見せる。その舌に吸い付こうとす
るとサンジは後ろに逃げる。そんな繰り返しでサンジを壁際に追い詰める。サ
ンジは目を潤ませて笑う。妖艶。なんてぇ顔しやがる。俺の下半身に血が集まっ
ていることは自覚している。そして、目の前のこいつも。欲情してる。



 サンジがゆっくりとキスをしてきた。舌で俺の唇をなぞり、そっと離れる。
その隙を見逃さなかった。



 両手でサンジの肩をつかみ、動けないように力任せに壁に押し付けた。
 いきなりの行動でサンジは驚いていた。にらみつけるように、片方の口端を
あげて、にやり、と笑ってやる。好青年っぽい仮面とはさよなら。


 「あいにくと、我慢の限界でね」


 それだけ言うと、間髪いれずに噛み付くようなキスをしてやった。驚いたは
ずだ。サンジの体も口もこわばっていた。無理やり舌で口を開かせ、舌をから
めとる。時折サンジが漏らすくぐもった声は、逆に俺をあおるだけだった。


 唇を離してそのままの距離、低い声でささやいた。

 「下ろしてみな?俺のZipper」

 顔を離してにやりと笑ってやると、困惑したようなサンジの目があった。首
を傾けて無言でうながす。
 サンジの右手がゆっくりと俺のボトムスにのびる。ジッ、と金属の音がして
すべて下ろしたのがわかる。何も言わずにサンジを見る。布と布の間に、手を
差し入れてきた。

 「よく、できました」

 それだけ言うと、手を入れさせたままサンジの体を反転させた。壁に向かっ
て体ごと押し付ける。
 右手はサンジの背中と俺の間。左手は壁に押さえつけた。膝をサンジの足の
間にわりこませた。さて。自分の右手をサンジのボトムスのポケットに突っ込
む。そのまま体の中心へと手をのした。
 耳を甘噛みして首筋に唇をおとす。右手をゆっくり動かしてやると、壁に額
をつけたまま、サンジは甘い吐息を落とした。


 「……んんっ…」
 手を強く握り締め、サンジが耐えている。時折腰をサンジの体に押し付ける
と後ろ手をゆるりと動かす。
 やつの中心が硬くなるにつれて、息遣いも早くなっている。

 「…もぅ…や…だっ…」
頭をそらせてあえぎ始めた耳元に、唇をよせる。
 「やだ、じゃなくて、気持ちイイ、だろ」

 実のところ、どうしようか困惑していた。
 男に興味はないが、こいつだけは抱きたくてたまらない。
 かといって、ここで抱くと…。


 服とか部屋とか汚しちまう。それに、抱くならゆっくり抱きたい。

 とにかく、一度イカせよう。それから考えよう。


 体を離すと、サンジをソファに仰向けに寝転ばせた。すばやくボトムスと
下着をずらして、カチカチになった中心を咥えた。激しく抵抗されたが、その
手はやがて俺の髪を触り、その口からは甘い声しか出なくなっていた。

 腰をつかんでいた俺の肘につかまり、その手に力をこめると同時にサンジは
泣いているような声を出して、精をはきだした。
 口元をぬぐい、ソファに座った。自分の下半身が元に戻るころには、サンジ
も立てるようになるだろう。しどけなく倒れているサンジを見ると、また血が
集まりそうになるので目をそらせた。


 どういうつもりで誘ってきやがったんだか。

 目を閉じて気を静める。


 どれくらいたったろうか。サンジの動く気配で目を開けた。前をあけたまま
になっていた俺のボトムスに手をのばそうとしていた。その手をつかんで睨む。

 「何しやがる」
 「ゾロがほしい」
 「本気か? 俺は男にゃ興味はないが、あんたは別だ。本気ならどこかでヤら
せろ。が、どうなっても知らねぇぞ」
 「本気だ。…うち、来い。近いから」

 サンジは立ち上がって、にやりと俺を見下ろした。

 「良いツラ、してやがる」
 俺も立ち上がると軽くキスをした。
 「覚悟しとけよ」



 "個室"を出てフロアを横切り、出口へと向かう。

 「おい、サンジ!」
 後ろから声がした。あぁエースだ。

 サンジと一緒に俺も振り向いた。エースが、えっ、という顔をしている。
 「そういうこった。じゃな」
 俺はサンジの右肩に手を回して、にやりと笑った。
 サンジは左手を俺のボトムスの後ろポケットに突っ込むと、エースに軽く右
手を振った。俺と同じくらい、にやりと笑って。


 「あれだけ口説かれたのに、なんでエースになびかなかった?」
 「俺、ゾロに口説かれたかったんだけど。全然見てくれないから逆ナンパ」
 「たいした度胸だ。ノンケの俺を」
 「俺だってそうだ。あんただから欲しくなった」
 ふん。覚悟しやがれ。足腰立たなくしてやる。

 出口までの道を歩きながら何度もキスをした。
 もうこの店に来ることはないだろう。





END


TOP