与えられた任務は唯一つ。
敵城主愛妾を誑し込み、敵の弱点を掴む事。
何て事無い容易い仕事だと思っていた。
事実今まで失敗した事の無い内容の任務だったからだ。
この戦国の時代、女特に武家に育った女ほど不自由を強いられるものは居ない。
小さい頃は蝶よ華よと可愛がられていても、年頃になればそれは唯の駒だ。
惚れた男に嫁ぐ事など夢のまた夢、自分の身内を殺した者に嫁す事もある。
人質としての役割は勿論、内情調査や、時には愛した夫の暗殺を命じられる事さえざらだ。
そんな不憫な女に少しでも優しさを見せれば絆されるは必定、それを責められる者など居ないだろう。
端正な中に柔和な一面を覗かせるサンジの顔立ちは正にそういう役割にうってつけだ。
また今回の標的は敵城主に最愛の弟を嬲り殺しにされたと言われる女だとか。
だからといって舐めて掛かったつもりは毛頭無い。
無いが、つい涙ながらに勧められた一献を断り切れなかったのは否定出来ない。
気付けば、この有様だった。
目を開けたが、視界は利かなかった。
黒い布のような物で目を覆われていた。
横になった身体を起こそうにもそれも叶わない。
後ろ手に縛られた両腕が、両足首を結ぶ布と何かで繋がれているのか、三角形を自身で描くような格好のまま動けない。
ならばと感覚を研ぎ澄ませる。
人の気配は1人、多分先程まで相手をしていた愛妾だろう。
名をロビンと言ったか。
着物から香る匂いと、その醸し出す艶美な雰囲気はそうだと断定してもいい筈だ。
案の定、同じ声でサンジに語り掛けてきた。
「お目覚めかしら?もうすぐお館さまがお見えになりますわ。」
「何故このような…………貴方は彼を、ロロノア・ゾロを恨んでいると――――」
「そうね、そういう設定である事は確かよ。」
「設定?」
「そう、貴方をおびき寄せる為の。」
「オレを?!!何故?!」
「何故かしら?ご本人からお聞きになられたら?ねぇ、お館さま?」
するっと御簾を上げる音がして、サンジは驚いて音のした方へと反射的に顔を向ける。
先程まで全くその気配を感じなかったというのに、今はどうだ?
今まで感じた事が無い強烈な威圧感と痛いほどの視線に身震いする。
まだ刃物を抜かれたわけでもない。
周囲を敵に囲まれているわけでもない。
だというのに、こんなに恐怖を感じたのは初めてじゃないだろうか。
「その形(なり)は何だ?」
ゾロの太くて張りのある声がまたしてもサンジを震え上がらせる。
その恐怖に耐え、質問の内容を噛み砕いて、意味が分からずに眉間に皺を寄せる。
それに気付いたか、ゾロが質問の内容を変えてきた。
「髪の色をどうしたのか、と聞いている。」
「…………………。」
何故それをと聞き返そうとしたが堪えた。
相手の術中に嵌るような気がしたからだ。
事実、今サンジの髪の色は艶めいた黒だ。
だが、何故その事を聞いてくるのか、そもそも元の自分を知っているのか、疑問は後から後から沸いてきてサンジの
頭の中は大混乱だ。
勿論それを表に出すようなヘマはしないが。
とりあえず、相手の動向を待とうとサンジは黙る。
一方ゾロは、サンジが一度開いた口を閉じた事が気に食わなかったのか。
周囲に怒気を帯びたかと思うと、顔面に水のようなものを浴びせ掛けられた。
口内に流れ込んできたそれは、度数の高い酒のようだ。
ゴホッと咽てからギリッと唇を噛むと、ほうと感心したような声が上がる。
「気が強いな。面白い。…………髪は染めているわけでも無さそうだ。」
「………………当たり前だ。」
「ならば、何だ?答えろ。」
「答えなければどうする?」
「どうしたもんだろうなぁ?どうされたい?」
「……………帰してくれと言ったところでそうしてくれるわけでもあるまい。」
冷静に返答すると、そりゃそうだと余裕のある声で返してくる。
「まずは答えてもらわなければな。問い質す方法は幾らでもあるが、普通の拷問なぞ慣れたもんだろう?」
「…………………。」
「以前聴いた事がある。赫足一派はそりゃもう鍛え上げられた精鋭部隊、例え煮え湯に放り込まれようが
決して吐かぬ、とな。」
聞き慣れた自分の所属する一派の名前にギクッとしながらも、サンジは平静を装って答える。
「赫足か…聞いたことはあるが…………拷問係りが疲れるだけらしいな。」
「余りの酷さに見てるだけで寝込む者がいるとか。まぁ、無駄はオレも嫌いだ。だから今の内に吐け。」
「…………知ってどうする?」
「まぁ、今更間違っているとは思わないが、人違いだと困るからな。」
その言葉に先程のロビンの言葉が真実と分かる。
自分を狙っての此度の罠。
どこまで自分の事を知っているのか。
それに、ロビンの境遇も嘘という事になるか。
「こいつはオレ支配下のくの一の頭領だ。情報操作などお手の物よ。」
サンジの考えが透けて見えるのか、ゾロが言う。
「会話の内容と受け答えを省みれば、相手の考えなど聞くに及ばぬ。さ、先程の質問に答えよ。」
「…………薬だ。何故それを?」
「やはりな。……てめぇ、赫足のゼフの秘蔵っ子だろ?」
「っ?!!!」
赫足のゼフはサンジの祖父の従弟で自分の育て親だ。
先祖に南蛮の血を受け継いだサンジの家系には稀に出るのだ………金髪・碧眼の変り種『鬼』が。
唯でさえ忍びともなれば人目につかぬ容姿を必要とするのにその異形さは目立ち過ぎると、昔から
蔑視の対象となったものだ。
とはいえ、現頭首ゼフは自身が変り種だ。
並々ならぬ努力と忍耐の甲斐あっての頭首君臨だったのだ。
そんな彼が編み出したのが、一時とはいえ髪と目の色を黒くする薬だった。
服用する事に害が及ぶことはなく、自然とその効力が落ちるのを待てば髪も目も元通りに戻る。
自分のように厄介者扱いされる忍びには必要不可欠だ。
が、しかし――――
門外不出の薬品、それを何故敵大将が知っている?
赫足ゼフの養い子である自分の事も、その自分が『鬼』である事も。
「何故オレをそうだと思う?」
内心の動揺を悟られないように、勤めて低い声でゆっくりと話したつもりだが。
敵も然るもの、ふふんとあざ笑うかのように声を立てると、ごくんと何かを飲み干す音がした。
「見縊ってもらっては困る。彼奴がオレに寄越すとしたら、今までのオレとのやり取りからして、本人自ら赴くか、
若しくは右腕とも評されるてめぇを寄越すのが筋だろうが。本人は齢60近い筈、必然的にてめぇということになる。」
5人目で漸く腰を上げるとは少し耄碌したか?と揶揄するゾロに、サンジはこれまでの経緯を振り返る。
確かに一派の重鎮4人が行方不明と聞いている。
詳しい内容は聞いてないが、恐らくゼフがゾロに回した者たちなのだろう。
そう考えていたサンジの注意を向けるかのように、どんと畳に重い陶器を置く音がした。
ちゃぷんと液体が鳴ったようだから、ゾロは酒瓶ごとかっ喰らっているのか。
「御酒が少し過ぎるようですが?」
くすくすと笑うロビンの声に、ゾロが愉快そうに明るい声を放つ。
「当たり前だ。楽しい余興が待っているのだからな。」
「………オレをどうするつもりだ?」
「ん?まだ効いてこぬか?ちゃんと入れたんだろうな?」
「はい、確かに。量もきちんと致しました。そろそろの筈です。」
「???何……え…っ?!!!」
会話の内容を確かめようと耳を欹てようとしたその時、徐々に身体に違和感を感じ始めた。
体温が上がっている、それも急激に。
ぶわっと全身の汗腺が開き、一気に汗が流れ落ちる。
息も上がり、視界を閉ざす目隠しの中で目を見開いた。
「……あっ………な、何……しやがっ……ぅっ…!!」
「先程顔に掛けてやった酒に、な。解毒剤とでも言えばいいのか?人の姿を『鬼』に変える為の。」
「っ?!!!何っ?!!!」
その言葉に愕然とする。
髪と目の色を変える薬の解毒剤は確かに存在する。
だが、その材料の中にある1つの薬草には厄介な効能があった―――催淫効果をもたらすのだ。
だからこそ自然と効力が落ちるのを待つというのに。
案の定、焦って動かない身体を必死で捩ると、着物に擦れてそこが如実に反応を示してしまう。
上がる声を必死で堪えるものの、身体の内側から襲う奥底の無い欲望が刺激を求めて暴れ狂う。
「ん?どうした?熱いのか?」
「…くっ…………んうっ……どって…こと……あっ…!!」
「やはり熱いようだな。水を持ってきてやれ。」
「用意してありますわ。これへ。」
少し大きな声をロビンが出したかと思うと、すっと障子の開く音がした。
すたすたと何人かの足音がしたかと思った次の瞬間、冷たい水が自分の身体に容赦無くぶっ掛けられる。
冷たくは感じたものの、そんなのは一瞬だった。
そんな事じゃこの熱は冷めるわけが無い。
湿った着物が返って絡み付いて、それが自分の欲を刺激して堪らない。
「あっ……んん………あ、熱ぃ……」
「ああ、そうか。着物を着たままだから熱いのだな?それは気付かず悪かった。」
くっくっと笑いながらゾロがそう言うと、先程近付いて来た数人が更に自分の傍に来る。
ふわっと漂う香の匂いから、女性だろうかと朦朧とする意識の中推測したサンジだったが。
流石にその行動までは予測出来なかった。
身体に冷たい鋼のような感触が当たったかと思うと、布を切り裂く音がして。
縛られた腕と両足はそのままに、濡れた身体が外気に触れる。
「なっ?!!!!」
「身に纏うものなど熱くて邪魔だろう。お前たち、彼の御仁が濡れてしまって可哀想だから、拭って差し上げなさい。」
又しても愉快そうなゾロの声がして。
何をされるか身構えたサンジの遥かに予想を上回る事態が起こった。
「あっ!あっ…な、何し……んんぅ………くぅ……」
ピチャピチャと音を立てているのはサンジの身体を襲う熱い舌、それも3枚だ。
1枚は項、1枚は脇腹辺り、1枚は大腿部をこれでもかと丹念に嘗め回してくる。
先程掛けられた水のせいで、サンジの身体は障子の隙間から入り込む秋の夜風で僅かに冷やされたのに。
薬と刺激のせいで、上がる体温は際限を知らないようだ。
舌が触れる場所以外の水滴も、サンジの体内の更に上がった熱で蒸発していくような熱さだった。
「女共に嘗め回される感触はどうだ?少しは楽しめてるか?」
「ば……か言えっ……てめっ……ああっ!…んふぅ……くそっ…」
舌だけでなく、サンジに添えられていた彼女たちの手が、身体中色んなところを這い回る。
耳裏から顎鬚をゆっくりと撫で摩る手があるかと思うと、胸の尖りを捏ねる指の腹、足の付け根を軽く摘む掌、そして、
誰にも許した事の無い後孔を探るように撫で回す指先。
視界が閉ざされているからだろう、それらを余計鮮明に感じてしまい、サンジは縛られた不自由な身体でのた打ち回る。
けれど、その直接的な刺激よりももっとサンジを乱れさせるものがあった。
それは―――ゾロの視線だ。
ねっとりと絡み付くようなそれが、サンジの身体中を襲う。
汗のせいで髪が張り付いた額に、喘ぎ叫ぶ口内と舌に、晒される喉仏に、色付いているだろう両の尖りに、引き攣る
腹筋に、びくつく足に、力が入ってしまう足の指先に、そして先走りを湛えるサンジの欲望の証に。
それら全てを察知出来てしまう自分の能力を呪いたくなる。
対し、ゾロは座ったまま酒を飲んでいるようだ。
時折ちゃぷんと液体の揺れる音がして、何かを飲み干す喉の音がして。
だが、視線はサンジから離れずに、全身を嘗め回す。
それに、その熱い視線に焼かれた。
痛みなら耐えられる。
蹴られようが殴られようが叩かれようが、そんなものは慣れているし慣れさせられてきた。
だがこんな感覚は知らない。
経験も無ければ、しようと思った事も無い。
ただ養父の期待に答える為、自身を厳しく律してきた。
だから知らない、こんな身体中が麻痺するような甘美な感覚は。
気付けば、2つの尖りは熱い口内で湿りを与えられ、後孔には細い指が2本入れられた状態でそこから舌で唾液を
流し込まれていた。
ゾロの視線は、サンジの下腹部を執拗に侵してくる状態だ。
静まり返った室内にいやらしい音が響き渡っていた。
その音に混じって上がるのは、甘い強請るような自分の声。
耳を襲うそれがまた自分を乱れさせると分かっていても、抑える事など最早不可能だった。
巧みな彼女たちの術に、そして熱いゾロの視線に我を忘れて、サンジは横たわったまま善がった。
時折自分の腹に当たる熱く湿ったものが、自身の欲望だと気付いていても不自由な手足ではどうする事も出来ない。
ただそれを早く解放して欲しくて、腰が前後に揺れる。
だが、そんなサンジの動きに誰もが気付いているだろうに、誰もそれに触れようとはしない。
ゾロの視線が注がれるだけだ。
それを感じて、それだけでサンジのそこは涙を溢す。
その涙が竿を伝い降りて、その感触にまた打ち震える。
気が狂いそうな、頭の中が焼き切れそうな焦れったさの海の中でサンジはもがいた。
口からは飲み下しきれない涎が頬を伝い落ち、涙がボロボロと零れ落ちる。
その雫を撫でるように大きな温かいもの、男の掌が触れた―――待ち望んでいた熱だった。
「欲しいか?」
ゾロの声だ。
「オレが欲しいか?」
ゾロの欲情し切った声だ。
少し汗で湿った掌がそれを証明している。
その手に頬を擦り付けて、サンジは薄く開いた口から舌を徐に出す。
水を欲しがる犬のように。
するといきなりぐいっと頭を片手で持ち上げられた。
後孔に食い込んでいた女の指が当たる位置を変え、サンジは余りの善さに悲鳴を上げそうになったのだが。
それは飲み込まれた、ゾロの口に。
斜めに深く合わされた唇の間から、滑り込んできたゾロの熱い舌が、サンジのそれを捉える。
待ち侘びたそれをサンジは必死で迎え入れて、互いに取り合うように絡ませた。
尖りと後孔と口腔とを一気に攻められ、サンジのそこは触られないまま絶頂を迎える。
口付けられたまま、ひくひくと小刻みに揺れ、サンジは欲望を吐き出したのだった。
快感の余韻に浸りながらはっはっと息を整えていると、手足の拘束が解かれる。
身体が自由になり、痺れた手足をゆっくりと伸ばしつつ周囲の気配を探ったが、もうゾロ以外居ないようだ。
それでも抵抗する気力を失ったまま、相手の動きを待ってしまう。
そんな自分に情けなさを覚えながらも、腰に触れた掌の温もりに安堵したのは何故だろうか。
ひょいっと簡単に身体を持ち上げられ、何かを跨がされたと思ったら、硬くて熱いものが身体の中心を貫いた。
「ああああああああっ!!」
有り得ない衝撃に、思わず前にあったモノにしがみ付く。
自分よりも温度の高いそれがゾロの身体と気付いたのは直ぐだった。
それと分かってからも、サンジはこれでもかとその身体に回した腕に力を込めた。
縋り付いて、首を振って襲い来る快感に震えるサンジにゾロが言う。
「………覚えてるか?」
「あっあっ……な、何……を?」
突然の質問に、真っ白になっていた頭が少し鮮明になる。
なるが、内部を焼く灼熱の塊にすぐに自分を持っていかれそうになる。
最奥の更に奥を侵すそれは、先程までの快楽とは比べ物になら無い程強烈で明瞭だ。
押し流されそうになるが、それでも必死でゾロの言葉を待つ。
「つい先日だ。白髭んとこでオレを襲おうとしたろう?」
「……んんっ………そ…れはっ……あぅん…」
「あん時目が合った。覚えてるか?」
確かに覚えていた。
若い芽は早めに摘み取るに限るとの依頼を受け、自分もその場に赴いた。
だが、あくまでも刺客ではなく、白拍子としてだ。
その時も髪を目を変え、舞台に上がり、その時期を見計らっていたのだ。
舞い踊りながら、常にその一挙手一投足を見極めて。
自分が合図を送れば、仲間が動く手筈になっていた。
だが、今だと思った瞬間、ゾロがこちらを向いた。
それまで一度たりとも自分を見ようとしなかったゾロが。
目が、視線がぶつかり、交差した。
そのまま視線が外れることは無く、交わったままで、合図を送る事も侭ならずに。
結局時期を逸し、失敗に終わった計略だった。
「オレ……て何……わか……った?」
「わかるさ。『鬼』なら、てめぇなら他の誰も分からなくとも、オレには分かる。」
「やぁ…っ……も、動……けよぉ………」
焦れてそう強請ると、ゾロが動いた。
だが、それは予想外の動きだった。
腰に当てていた手を外し、サンジの目を覆っていた布を取り去ったのだ。
突然開けた視界に目が眩む。
薄明かりとはいえ、真っ暗な世界からでは眩しい。
目が慣れるにしたがって、はっきりと映るゾロの姿に目を見開く。
あの時は、白髭の所で会った時はこんなじゃなかった筈なのに。
自分以外と、薬を飲んだ自分と同じ『人』だったのに。
そんなサンジの表情にゾロが少し寂しそうに笑った。
「我も『鬼』よ。」
夏の木立を思わせる緑の髪と、狼のような金色の眼。
目が合って、一瞬揺らいだそれをサンジは見逃さなかった。
だからサンジは笑った。
宥めるように、案じさせないように、ただただ優しく笑い掛けた。
そんなサンジにゾロは訝しげに目を細めると、ふっと口角を上げる。
以後、自分を剛直で貫き穿ちながら真っ直ぐに自分を射抜く獣のその視線にサンジは酔い痴れた。
「どうなさいます?」
ロビンの声にサンジの意識が浮上する。
気ぃ失っちまったかと自嘲しつつ、話し声に気を集中する。
どうやら部屋の外、障子の向こうにゾロと2人で話しているようだ。
「赫足に伝えろ。てめぇんとこの若『鬼』、オレが預かった、とな。」
「無駄に喧嘩を売る事になりません?」
「こちらの勢力を見誤ればそうなるだろうな。いざとなれば返り討つまで。」
「ふふっ、相変わらずの自信ですこと。」
ころころとロビンの笑う声が館内部に響く。
それに対し、ゾロの返事は無い。
その後の会話は小さくてよくは聞こえず、サンジは会話を聞くことを諦め、ふうっと溜息を吐く。
本来ならば彼らに近付き、もっと探らなければならないのだろうけれど。
あれ程己の気配を隠せる男だ。
サンジの気配を察知するなど、朝飯前だろう。
大体大勢の宴の中で、目が合っただけで自分の正体に気付いたのだ。
事は急がず、慎重に動く方がいいだろうと踏む。
それにしても、やはり自分をゼフから引き離す為の計略だったと見える。
今現在、白髭に仕える赫足一派の情報収集力は桁外れに高いと評判で、他国からの引き抜きも多々あるとゼフは言っていた。
その一派の中で、自分で言うのもなんだが、めきめきと頭角を現し、『鬼』にも拘らず次期頭首と噂される自分だ。
そんな自分が居なくなれば、かなりの力を割く事が出来るだろう。
そう考えて、少し気持ちが沈む。
そして、そんな自分に苦笑する。
同じ『鬼』として、寂しさを分かち合いたかったのだろうかと勘繰った自分は間違っていたのか、と。
裏で働く自分よりも、その姿を人目に晒す表舞台のゾロはもっともっと辛かったんじゃなかろうか、と。
絆され掛けた自分の甘さに情けなくなり、ぐっと唇を噛み締める。
だが、自分とて今までそうして女を騙し、戦果を上げてきたのだ。
例え、その女が自分に感謝してくれていたとしても。
例え、その女が自分と共に敵を討つ側に回ろうとも。
自嘲気味に笑みを漏らすと、サンジは全裸の自分に掛けられていた自分の着物を更に引き寄せ丸まる。
このまま飼い殺しにされるのだろうか?
それとも情報を引き出されて命を取られるのか?
どちらかと言うなら後者だなと思いを巡らせていると、もう一度彼らの会話が漏れ聞こえるようになった。
戦略が決定したのかもしれない。
耳を欹てていると、ロビンの声が聞こえた。
「もうこの計略は行いませんの?」
「必要なものは手に入った。これ以上は無駄だ。」
「そうですわね。でもまだ完全に入手したとは言い切れませんでしょ?」
「ん?」
「『身体』だけでは物足りない……そうじゃありません事?」
「…………いずれ陥落させる。」
「ふふふっ、もう御自分は堕ちてらっしゃいますものね。」
「侮れねぇな、てめぇは。………ヤツをここに留め置け。オレがいいと言うまで一歩たりとも外へ出しては成らん。」
「委細承知仕りました。早くその時が来る事をお祈りしておりますわ。」
「………オレには神頼み等用は無い。奪い取るまで、だ。」
ゾロの言葉にロビンがくすくすと笑う。
それに対し、ゾロは何も言わずに歩き始める。
気配が遠ざかっていくところを見ると、今はここに1人放置されるらしい。
ならばと身体を起こそうとして初めての感覚に驚く。
後孔から、ゾロの注ぎ込んだものが流れ落ちてきたから。
その感触に先程までの絡みを思い出して、今さっき聞いたゾロの言葉を反芻して。
居た堪れずに、サンジはもう一度身体を横たえる。
そして、室内を見渡した。
自分の左手と背後に障子、右手に襖、正面に書院造の床の間と配置された8畳の部屋だった。
この造りから見ると、多分離れか何かなのだろう。
しばらく様子を見よう。
もしかしたら、見つけたのかもしれない――――これから先一生自分が仕えるべき唯一の相手を。
赫足一派は一生一主が原則では無い。
その時々に応じて、自分が仕えるべき相手を見極めるのだ。
ゾロが、ロロノア・ゾロが自分の『身体』も『心』も必要としてくれている。
もし本当にそうならば……養父を裏切ってでも彼の傍に居よう。
彼の傍で、彼を支え、彼を守り、ただ彼の為に全てを尽くそう。
そう決意して、サンジは着物の下でふっと笑った。
先程間近で見た、ゾロの揺れる金色の目を思い出して。
そしてあの時、舞台の上で受けたゾロの視線を思い出して。
「もうとっくに陥落してんだよ、畜生。」
そう口惜しげに呟きながら。
終
さすが、ちょぱの本領発揮ともいえる時代物です!“鬼”の設定が萌えるv
女性達に攻めれらるサンジって・・・いいよねいいよねvvえろ攻め万歳!
持って生まれた容姿とは言え、苦難を強いられてきたであろうゾロを思うと
サンジとの出会いが彼にとっての福音となることを祈らずにはいられません。
ちょぱー!切なくも美しい鬼とエロ攻め萌えをありがとう!!!
またよろしくね〜♪
